ポッポ

小学校低学年のある日、夕方一人で下校していたときのことです。

 

通学路に捨てられている猫が居ました。

 

まだ小さく、雨に濡れてか体をブルブルと震わせていました。

 

見つけたものを拾うのが小学生です。

 

すぐに抱えて家に持ち帰りました。

 

子猫があまりに衰弱しきっているので、親も飼うことを許してくれました。

 

 

最初の2、3日は水を飲むのがやっとであまり食べられませんでしたが、

 

看病していくうちに少しずつ元気になってくれました。

 

そして『ポッポ』と名付けました。

 

既に一年前から飼っている先輩猫マイケルは

 

「ちっ、仕方ねえな!」

 

と文句を言いながらもポッポの面倒を見てくれました。

 

家の中が若干前より騒がしくなり、これがずっと続くものだと思っていました。

 

しかしある朝、ポッポの様子が豹変しました。

 

高い熱があり、呼吸が激しく、さらには痙攣していました。

 

 

まさに死にそうなのです。

 

 

母親が車で片道15分の動物病院に連れて行くことになり、

 

当然私も付いて行くつもりでしたがこんなときに限って具合が悪かったのです。

 

正直言うと仮病以外の病気は珍しく、嘔吐や下痢とはまた違った腹痛に加え、

 

立ち上がるのがやっとという体の重さがありました。

 

故に、自宅待機せざるを得ません。

 

無理矢理付いていっても荷物が増えるだけです。

 

母親とポッポが出て行った後、私は病人らしく部屋で横になっていました。

 

 

10分くらい経ったころでしょうか、

 

私の寝ている部屋の入り口に気配を感じ

 

目をやると、そこにはポッポがいました。

 

さっきまでとても立ち上がることすらできなかったポッポが立っている

 

、さらには自分のほうへ歩いて来たのです。

 

 

「治ったんだ」

 

 

ただそう思いました。

 

近づいてくるポッポに腕を伸ばして触れ、

 

それをかいくぐってポッポは自分のお腹の上にちょこんと座りました。

 

そこで私の記憶が途切れてしまいます。

 

 

気が付いたとき私は眠っていたようで

 

傍には帰ってきた母親と抱かれているポッポが居ました。

 

しかしポッポは、目を閉じていて、体は冷たく動きませんでした。

 

頭の中のクエスチョンマークが増えていくばかりです。

 

ポッポは病院に着く前に息をひきとったとのこと。

 

では私の見たものは何?幽霊?それとも夢?


そこで私は自分の体調が驚くほど良くなっているのに気付きました。

 

どうしてもポッポの最後の行動が気になってしまう。

 

私の悪い部分をポッポは持っていってくれたのだろうか。

 

そもそも私が具合が悪いのを知っていたのか。

 

何よりあの腹痛の正体が今となっては一番の不思議です。

 

後にも先にもその腹痛は味わったことがありません。

 

つまり、

 

ポッポの痛みを私は共有していたのかもしれない。

 

ポッポと私は繋がっていたのかもしれない。

 

 

と、多くの謎を残したままですが


たとえ夢でも幻でも

 

これが、私が霊の存在を確信した出来事です。